令和8年度 奈良金春会演能会
能「高砂 舞序破急ノ伝」(たかさご まいじょはきゅうのでん)
九州阿蘇宮の神主(ワキ)が神職(ワキツレ)を伴い、春の播州高砂の浦を訪れる。すると老人(前シテ)と姥(ツレ)の夫婦が松の木陰を清めている。二人は松のめでたさや和歌の徳を語り、高砂と住吉の松が「相生の松」、夫婦の松であると述べ、自分たちこそ高砂住吉の神と明かす。やがて老人は摂津住吉で待つと告げ、小舟に乗り沖へと去って行った。浦の男(アイ)が相生の松の話などを語り、神主は船に乗って住吉へ赴く。すると住吉明神(後シテ)が出現。明神は颯爽と舞を舞い、平和な世を祝福する。
本日の小書(特別演出)では、明神の舞が常より緩急のあるものになるなどの変化があります。松と和歌の徳の話、明神の舞等、祝言の気分に満ちあふれた作品。世阿弥作。
能「七騎落」(しちきおち)
石橋山合戦に破れた源頼朝(ツレ)は、主従八騎で西国に船で逃れようとするが、祖父や父の先例から八は不吉な人数であると思い、家臣の土肥実平(シテ)に一人を下船させるよう命じる。岡崎義実(ツレ)と問答した実平は、息子遠平(子方)を説得し下船させる。折しも陸には敵が寄せて来る。一方、平家方にいた和田小太郎(ワキ)が、頼朝に味方しようと船で近づいてくる。それに気付いた実平が和田の本心を探るため、頼朝とはぐれたと欺くと、和田は生きる甲斐がないと自害しようとする。実平が真実を明かし、和田は頼朝と対面、船から遠平を連れて来て、父子は再会を果たす。実は和田が遠平を匿っていたのであった。やがて酒宴となり、実平は颯爽と舞を舞う。
親子の絆に家臣団の結束が交差していく展開。実平の「男舞」には再会の喜びに加え、頼朝の前途を予祝する心もあります。
解説 中司 由起子
次回予告
6月28日(日) 能「半蔀」田中 直樹 能「春日龍神」金春 嘉織
7月26日(日) 連合謡曲仕舞会
10月18日(日) 能「東方朔」金春 穂高 能「田村」金春 憲和
~能楽の魅力探訪~ 能「融」十三段之舞 思立之出 ほか
古式ゆかしく 自然そのものを舞台として 演ぜられる能楽をご堪能ください
令和7年度 奈良金春会演能会
能「小鍛冶」(こかじ)
一条院に仕える橘道成(ワキツレ)が、剣を打つようにという天皇の命令を三條の小鍛冶宗近(ワキ)に伝える。しかし宗近には相槌をする者おらず、困り果てた宗近は氏神の稲荷明神に参詣する。すると童子(前シテ)が現れ、ヤマトタケルが東征で敵の野火に囲まれた時に、草薙の剣で草をなぎ払って敵を討った神話などを語る。童子は宗近に剣を打つ準備をして待つように告げ消え去る。入れ替わりに稲荷明神の末社の神(アイ)が現れ、童子と宗近の出会いなどを語る。宗近が支度を調え祈ると、霊狐(後シテ)が出現、宗近の相槌をして剣を打ちあげる。霊狐は「小狐」の銘が刻まれた剣を道成に捧げると、雲に飛び乗り稲荷の峰へと帰って行った。
童子が剣の霊験を語る場面、霊狐と宗近の相槌の様子、霊狐のきびきびとした動きなど見どころの多い作品です。
能「景清」(かげきよ)
源平合戦の後、平家の侍悪七兵衛景清は源氏に捕らわれ、日向国宮崎に流されていた。そこへ景清の娘人丸(ツレ)が従者(ワキツレ)を伴い鎌倉からやってくる。景清(シテ)は盲目の身となり平家語りをして孤独に暮らしていた。景清は娘に気づくが、名乗りもせずに一行を立ち去らせる。しかし里人(ワキ)のとりなしで父と娘は対面を果たし、景清は屋島合戦で敵三保の谷と兜の錣(しころ)引きをした武勇談を語り、やがて故郷へ帰る娘を見送る。
零落した身の上を嘆く景清の声が庵の中から響く場面は、聞きどころ。かつては武勇を誇るも落ちぶれた武将の痛ましさと、親子の深い愛情を描いた作品。面は専用の「景清」。
解説 中司 由起子
令和8年度 奈良金春会演能会 予定日
4月19日(日) 6月28日(日) 10月18日(日)
令和8年度 奈良金春会連合 謡曲・仕舞会 予定日
7月26日(日)
なら燈花会能 ~ 業平生誕千二百年 ~
令和7年度 奈良金春会演能会
能「奈良詣」(ならもうで)
源平合戦の後、敗れた平家の侍、悪七兵衛景清(シテ)は西国に潜伏していたが、奈良東大寺の大仏再建にあたり供養があると聞き、若草山辺りに住む母(ツレ)を久しぶりに訪ねる。母は景清が源頼朝の命を狙うことを案じ、景清は源平の戦いを振り返り、今の境遇を嘆く。やがて夜が明け、二人は涙ながらに別れる。大仏供養の日、頼朝(子方)が家臣(ワキ)従者たち(ツレ)を従え現れる。景清は、場を清める神職の姿で群衆に紛れ込み、頼朝に近づこうとして家臣に見咎められる。景清は神仏の威光を盾にきり抜けようとするが、家臣は景清の武装に気付き詰問する。景清は再び雑踏に紛れ、家臣は従者に追討を命じる。警戒が強まり、景清は暗殺を諦めるが、名乗りを上げて大勢の敵に割って入り、若武者を切りつけ、次の機会を待つと言い残し、姿を消すのであった。
緊迫感に満ちた大仏供養でのやりとりは、見どころの一つ。他流での曲名は「大仏供養」である。
能「鵜飼」(うかい)
安房国清澄の僧(ワキ)が供の僧(ワキツレ)を連れ、甲斐国石和川を訪れる。僧は一夜の宿を里の男(アイ)に乞うが、断られてしまう。代わりに川辺の御堂を教わった僧たちは、御堂で一夜を過ごすことにする。すると御堂に鵜使いの老人(前シテ)が現れ、殺生禁断の川で鵜を使ったのが露見し、殺されて地獄に墜ちたと語る。そして、鵜飼の様子を見せ、暗闇へ消え失せる。里の男に話を聞いた僧が、川の小石に法華経の文字を記して弔うと、地獄の鬼(後シテ)が現れる。鬼は、老人が生前におこなった僧への善行と経文の功徳によって成仏したと告げて、法華経を賛美する。
生き生きとした鵜飼の様子を再現して見せる「鵜ノ段」には、殺生を戒める仏教の教えを知りつつも漁にのめりこむ人間の業が描かれているようです。
解説 中司 由起子
次回予告
7月27日(日) 奈良金春会連合謡曲仕舞会
10月19日(日) 能「小鍛治」田中 直樹 能「景清」金春 穂高
令和7年度 奈良金春会演能会
能「源氏供養」(げんじくよう)
都の安居院の法印(ワキ)が供の僧(ワキツレ)を連れ、石山寺(滋賀県)に参詣する。法印の前に女(前シテ)が現れ、『源氏物語』の主人公である光源氏の供養を頼み、自分は紫式部であるとほのめかし消え失せる。そこで法印が供養すると、紫式部の霊(後シテ)が現れて布施の代わりに曲舞を舞う。紫式部が石山観音の化身であり、『源氏物語』は無常を世に知らせるために書かれたと霊は述べる。
紫式部の霊の舞う、長大な曲舞が中心です。曲中には、『源氏物語』の巻名が巧みに詠みこまれています。
能「融」(とおる)
旅の僧(ワキ)が都の六条河原院で汐汲みの老人(前シテ)と出会う。老人は、昔、融の大臣が河原院に陸奥塩竃の浦を模して庭を作り、難波浦から運んだ海水で塩焼きをし、数々の遊びをしたことを語る。さらに老人は都の名所の山々を数え、田子を担いで汐を汲むと汐煙の中に姿を消す。近くに住む男(アイ)が融の話を語り、僧は眠りにつく。月明かりの下、融の霊(後シテ)が在りし日の姿で現れる。融の霊は懐旧の思いで「早舞」を舞い、月の都に帰って行く。
源融は政治的には不遇でしたが、風雅に生きた人物として知られます。紀貫之の歌「君まさで煙絶えにし塩竃のうらさびしくも見えわたるかな」が主題曲のように響きます。 世阿弥作。
解説 中司 由起子
次回予告
6月29日(日) 能「奈良詣」金春 飛翔 能「鵜飼」金春 憲和
7月27日(日) 連合謡曲仕舞会
10月19日(日) 能「小鍛治」田中 直樹 能「景清」金春 穂高
古都奈良を彩る音楽祭
~能楽の魅力探訪~
能 「高砂」八段之舞 ほか
古式ゆかしく
自然そのものを舞台として
演ぜられる能楽をご堪能ください
PDFファイルを利用するにはアドビ社が無償配布する「Adobe Reader」をインストールする必要があります。
Adobe Reader(無償配布)は以下バナーをクリックして入手してください。